黒川哲郎は、【建築雑誌1996年7月号109頁】で、大断面軸組造の提案について、「大断面によって防火の問題をクリヤし、金物の利用を最小限とし、木造らしく構造を露出し、一般解として利用しやすいように、プランの多様性や空間のフレキシビリテイを得やすくする」と述べています。
「日本の住宅は、採光や通風のため、南北面に大きい開口をとり、東西面壁が主で、RC造では、ラーメンと壁を併用してそれを解決してきたが、いわゆる在来軸組造の壁量計算による構面設計となじまないようだ。そこで、集成材工業会が認定をとった一方向ラーメン(あるいはアーチ)、他方向筋交い(あるいはブレース)とう構法を援用して、スケルトンモノコックのペリメータストラクチュアシステムをつくった。ラーメン部の仕口は,半剛接とでもいうべきもので、長期には短ホゾと大入れ、短期は引っぱりボルトである。‥‥砺波地方の民家構法枠の内からヒントを得て、これを2方向半鋼接に拡げ、プランと空間の多様性を得ることからコルビュジエのドミノシステムにならい木造ドミノと名づけた」とし、未来予想図を「私の軸組木造は、方向性をもたない平面に点状の構造が点在し、それに架構(小屋組)を組み合わせ、日本の空間構造として再生したい」と描いています。
1984年から『山本邸』、『菊池邸』『竹田邸』と集成材によって習作を重ね、無垢の、ログ材による『K&I邸』を経て、製材による『世田谷I邸』は、プロトタイプに限りなく近づいたものでした。
コメント