『建築文化』1985年12月号の、
特集:日本の住居1985-戦後40年の軌跡とこれからの視座「建築家15人のビジュアル・メッセージ」の中で、黒川哲郎は、
「今日の住宅には、ア-トとしてのそれと、商品としてのそれの二通りがあり、おそらく前者は、2010年おいて、再びすべての芸術の頂点に立つものとなるであろう。なぜなら、建築のもつ価値の普遍性と芸術的尖鋭性と今日的実利性は、そのパトロネージュとしての投資を他の芸術と比べても、きわめて意味あるものとしつつあるからだ。他方、ハウジングメーカーを中心として生みだされている商品化住宅は、着実に、その性能とそこに住まう人々の生活様式を向上させ、ある種の文化的意味すら獲得しようとしている。そして今、すべての戸建て住宅は、その2極の間をただよっている」
と、建築家にとって黄金期ともいえる80年代らしく、楽観的な文言を[コメント]としています。 あるいは警句だったのかもしれませんが。そして、
「私自身、一方で作品をつくろうとし、他方で、商品よりのアプローチを積極的に続けている。それは、デザインプロダクトとしてのスタディがつきぬける先に、住宅の、建築としての別の可能性があるのではないかと感じているからだ。機能や技術をもう一度、空間づくりに加えなくてはならない」
と結んでいます。
ビジュアル・メッセージとして、 1982年に設計した『伊東邸』での大空間を得るために、筋交い壁を建物の外にまで出さねばならなかったことから、 在来工法の空間づくりへの限界を感じ、良き住宅のために、機能や技術をもう一度加えたいと、 「設備・床・骨組み・被膜」に独立させた「フォーミュラーハウスⅢ」を提案しています。
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