構造家・濱宇津正氏とのスケルトンログ

構造家・濱宇津正氏とのスケルトンログ

建築のミッション―スケルトンドミノとスケルトンログは林業と建築を結ぶを読み終わる」と、吉岡紘介氏がツイートしてくださいました。

「木造住宅における半剛接軸組『スケルトンドミノ』と大スパン木造における皮剥ぎ丸太立体トラス架構『スケルトンログ』の実作と解説。1980年代から林業、構法、空間論の視点で積み上げられた圧巻の実績」

「木造トラスは全国で36も実現されていて、アーチ系、平行弦系のトラスはほとんどやり尽くされているのではというほどのバリエーション」

とのお言葉をいただきました。

地域の材と地域の技術によって、一作一作、木造構法を開発し、実践してきた黒川は、作品として完結させるのではなく、ケーススタディとして取り組み、建築にしかなし得ない社会へのミッションを追求することが建築家の仕事のダイナミズムととらえていました。

【住宅建築誌2000年11月号】の特集「スケルトンログの描くエコグラフィー」では、「構造家・濱宇津正氏との対談」、「大分県の大工棟梁の足立信治氏との対談」、そして「スケルトンログへの軌跡と解題」として『置戸営林署庁舎』から『日田高校体育館』までの実作と、『郡上八幡総合スポーツセンター』までのプロジェクトを含む16棟の、構造のグルーピングがなされています。

特に濱宇津氏の、丸太の構造材としての面白さと苦労話は圧巻です。編集子の「二人の共同の仕事はこのスケルトンログ構法という名のくくりで捉えるのか、それとも基本としてスケルトンログがあり、それぞれの作品ごとに別個の構法が存在するのでしょうか」という質問に、黒川は、

「ログというと組積的なイメージがありますが、ログはログでも骨組としての構造という意味でスケルトンログと称しています。構法は、構造、材料の仕立て方、建て方、そして皮膜などの全体にかかわっていくところまで、と考えています。加えて、構造形式や力学的な話が別個にあり、構造はラーメンからトラスからアーチからまで含まれていると考えます」

と答え、続けて濱宇津氏が、

「部分的にはトラスを組んでいても全体としてはラーメンだというように複合的にならざるを得ない。…『日田高校体育館』の場合、30アーチを6m丸太材でつくる必要があり、それぞれ単体では安定しないので、ずらしたり、組み方を工夫しながら全体のアーチを作らざるを得ません。半コマずらしにしていくことによってトラスと呼べますが、全体をとおとしてはアーチなのです」

と語り、丸太一本一本のヤング系数を測定して、材のレベルによる判別に話は及びます。

こうした二人のパートナーシップは、樹齢350年・350φつまり年輪間隔0.5㎜の天然檜材600本を入手しての『郡上八幡総合スポーツセンター』へと続き、『うきは市立総合体育館の3棟』で終焉を迎えます。吉岡氏から、

「うきは市立総合体育館うきはアリーナ(2009)は、メインアリーナ棟、多目的アリーナ棟、プール棟を全て異なるトラス架構で設計されていてかっこいい。見に行きたい。特にプールはトラスの中にアーチを入れ込んでいて上手い」

とのお褒めの言葉をいただきました。黒川は『建築のミッション』で、

「メインアリーナ棟は『立体ハウトラス構造』、多目的アリーナ棟は『立体プラット構造』、そしてプール棟を、短尺材アーチの屈曲を、懸垂曲線を描くトラスによって抑制させる構造は、『西祖谷山村物産館』のトラスアーチの発展形です。圧縮主体の木造ならではのアイデアは、構造家・濱宇津正の独創で、まさに「ハマウヅトラス構造」です。

と感謝と敬意をこめて綴っています。

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