「道東を旅行するので『置戸営林署庁舎』の資料を」との要望があり、【住宅建築1997年4月号】を繰ってみました。
『黒川哲郎+デザインリーグ作例9題』として、「木の公共建築」と「通直大断面集成材半剛接軸組造の住宅」が、掲載されています。
その巻頭言『森の国の再生――林業と林産業と木造建築のリンケージ』で、
「木造は構造というよりは構法」という構造設計家・濱宇津正氏の言葉を、こう説明しています。
「確かに、RC造や鉄骨造と違って、仮説から結論までひとつの合理的流れで設計することは困難である。材料の選択、乾燥のさせ方、割れや変形の予測、加工・建て方の計画などほとんど構造設計とはいいがたい事項の検討やその編み込みの計画が重要である。
こうしたことは、これまで当然のごとく大工が行い、それによって林業と林産業と木造建築は自ずとのリンケージされていた。しかしながら、戦後の大工技術の衰退によって、今日では、それを担うものが誰もいなくなってしまったし、リンケージも消滅してしまった。
私は、今それを再生するのは建築家しかいないのではないかと思っている。在来軸組に代わる新たな構法、すなわち設計者にとってレスポンスのいい、大工にとって取り組みやすい、そして林業家にとって長期的、計画的に安定供給を続け得るプロトタイプとしての構法の開発と普遍化が求められるべきではないだろうか。
最近、集成材に加えて丸太を多く使い始めたのは、自然の素材から滲み出る合理的な力強さと地域性、それに一本一本の個性の魅力ゆえだ。100%地場産材の建築もいいし、新たな地域ブランドのブレンドも魅力的な建築や住宅を生みだしそうに思えてならない。‥‥我々は現在、大量の杉に囲まれて生きている。これをいかに我々の良き環境と資源になしうるかが、日本を再び木の文明と文化の国、そして森の国とすることの手始めであるように思う」
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