ペリメータストラクチュアの試み『田中邸』

ペリメータストラクチュアの試み『田中邸』

『山本邸』は、『置戸営林署庁舎』で使った「55%アルミ―亜鉛合金めっき鋼板」=ガルバリュウムを住宅に使った最初の事例と言われ、その掲載誌、【建築文化19854月号】で、黒川哲郎は、

「ここ数年間木造の仕事をつづけるなかで構造のシステムが共通の性格を持ち始め、収斂しつつある」と述べ、

「もうひとつの共通点は、ペリメータ・ストラクチュア・システム、つまり外周部に構造を分散させ、内部には柱や壁を置かないという方法である。初めは将来にわたるプランニングの融通性のためであったが、それを補完する収納間仕切や内装システムといった舗設的システムのスタディも進めることになった」と、後の「スケルトンドミノ」のソフト面の萌芽を感じたようです。

そして「軸組在来と言っている現在の日本の木造は得体の知れないものだとの気持ちも強くなった」と警句を発し、

「私がたどっている木構法のオリジンは1977年の『田中邸』(参考掲載誌【ジャパンインテリア1978年2月号】)」としています。

「4間×5間の総2階建だが、4間×4間部分は、1階では2本の内部柱、2階では無柱とし、残る1間スパンは吹抜けを持った上下階つなぎの空間である。内部の壁はこの二つのスパンの境のみで、あとはすべて壁に直交して配置された収納家具と建具で間仕切っている。

筋交いの入った壁を規則的に配置し、開口部は東西南とも均一である。2階は小屋組み現しで、棟梁は、鉄骨で4間をスパンさせている‥‥私の木構造の考えを展開させる三つのテーマが派生している。すなわち、

①構造の木造と鉄骨の、そして仕口の木と金属のハイブリッド構法
②軸組とパネルの組合せ、
③大屋根構造である 」

そして①②③の解題をしています。

「大きい梁間(といっても伝統的木造では当たり前だった)をどうスパンさせるか、すべて木でいくには集成材の利用、だが鉄の経済性も捨てがたい。仕口では結局木と金属の取り合いがテーマとなる。‥‥近世・近代で、木と鉄の組合せが良くない結果しか生んでいないのは事実であるが、私は木造の特に軸組造の大きな発展のためには、木と鉄のハイブリッドを構造体として、また仕口として積極的に考える必要があるように思う。その方がかえって伝統構造の再生にもなるように思う」と①について述べています。

②と③は次回に。

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