前回に引き続き、藝大の先輩、宮脇檀氏は、
【建築文化1977年9月号】の「建築家の書棚239——サブタイトルが本題の建築光幻学」で、
長谷川堯氏と共著の『建築光幻学——透光不透視の世界』(鹿島出版会)の書評を書いてくださいました。
「‥‥芸大の建築というのは不思議な学校で、ときどきこういうタイプの建築家を生み出す。‥‥黒川哲郎は奥村昭雄氏の影響だろうか、ガラスブロックの開発やスチールプレート1枚での丸窓やドアなど、およそ芸大生には珍しい部品の開発に熱中している。一見、一般的な芸大出身者のイメージではないのだが、ガラスブロックのデザインの例が示すように、根本には空間と光との関係を求めて、結果として細部に執念を込めるというパターンであって、吉村順三先生の影響下にあるという意味では、やはり芸大生ではある。‥‥これらの結果としての作品を見ていると、やはり彼の求めたものは“透光不透視”という光の効果を手掛かりにしての、空間そのものであったことが理解できるだろう。‥‥彼が足で集め、撮影した古今東西の建築の光と空間の関係をよく説明された写真で見る‥‥タウト、シャローン、ライト、コルビュジエ、磯崎からアノニマスな技術が生んだ空間まで。‥‥日本のように建築が空間よりまず彫塑的な形態で論じられることの多い国では、彼のようなスタンディングポイントから空間にアプローチする方式はめずらしいし、新鮮である。読者は必ずや新しい目を開かれるだろう。‥‥」と過分な絶賛をいただいたが、最後に、「余分な入れ知恵」とさりげなく間違いを指摘してくれている。
と、宮脇氏の文章をサマライズしているとき、長谷川堯氏の訃報をきいた。お目にかかる度に、『建築光幻学』はいい本だと、おっしゃって下さった先生の大きな笑顔が忘れられません。ご冥福をお祈りいたします。
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