皮剥ぎ丸太で天蓋(やね)を掛けることに建築の原初を問う

皮剥ぎ丸太で天蓋(やね)を掛けることに建築の原初を問う

徒然なるままにネットを見ていたところ、『美甘ドーム(2004年)』の写真が飛び込んできました。岡山県でLIVEイベントを企画していらっしゃる岡村瑛治氏が、

「岡山県真庭市にて念願でありました野外イベントを開催させて頂けることになりました。普段はキャンプ場である「クリエイト菅谷」の敷地内に、圧倒的な存在感で、真庭の主要産業にもあげられている森林資源を最大限に活用した、美しい『美甘ドーム』に一目惚れした事で、今回の会場にさせて頂く事にしました! 」

との嬉しいコメントがあり、デザインリーグのHPで調べて下さったのでしょう、

「東京芸術大学名誉教授の黒川哲郎氏が設計された、『詔弦連月』というこの建物は、518本におよぶ杉丸太の梁を楽器の弓に見立て、12対の弓が月のように連なることで建物自体が楽器となり、音を美しく木魂させる風景をイメージにして設計されているそうです。この杉丸太群が圧倒的な個性と真庭の地域性を表しています」

との文言が続き、陰ながら成功をお祈りしていましたが、近県に緊急事態宣言が出されてまもなくの「開催中止」のアナウンスメントに、準備を重ねてこられた皆様の落胆に思いを馳せました。

この『美甘ドーム』で、昨年12月5,6日に【PANORAMA DOME】としてイベントが開かれていたことも知り、YouTubeで鳥瞰から『美甘ドーム』全体の姿を見ることが出来、Instagramで展示物のバックに架構の姿を見ることができました。そして、こんなコメントもありました。

「建築家の故黒川哲郎氏が設計を手掛けた杉丸太トラスづくりが美しい全天候型のメインエリア」

クリエイティブなお仕事をなさっていらっしゃる方々が、「建築家の存在」をリスペクトした発信をして下さったことに感謝しています。

黒川は、東日本大震災後の国際会議『UIA2011 東京大会』の森林再生トークセッションで、「日本の木で日本の木の家居(いえ)をつくるスケルトンドミノと地域の材と地域の技で地域の天蓋(やね)架けるスケルトンログによる復興支援」とのタイトルでレクチュアをしています。

スケルトンログの実作の中でも、『狭山公園休憩所(1994年)』『上津江村屋根付き交流広場(1997年)』『中山間中津江活性化施設(2001年)』『小河内ダム園地休憩舎(2001年)』『武川村多目的屋内運動場(2004年)』そして『美甘ドーム(2004年)』は、皮剥ぎ丸太で天蓋(やね)を掛けることに建築の原初を問うていたように思えます。

ウイズコロナの新しい生活が模索されている今、「空間の流動性」と「空間の透明性」を実現するためにスタディを重ねてきた黒川哲郎が遺したものが少しでも役に立つことを願っています。

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